聖書 マタイによる福音書4章1-2節(新共同訳)
さて、イエスは悪魔から誘惑を受けるため、“霊”に導かれて荒れ野に行かれた。 そして四十日間、昼も夜も断食した後、空腹を覚えられた。
“導かれて”、といえば聞こえがいい。だが“ひきずりだされて”、ではなかったと誰が言える。血肉のうるおいを残忍に吸い取る、荒れ野の力。
ここに人の関係はない。誰からも頼りにされない。なにもすることがない。ここにあるのは、渇きと飢えの、おのが身体のみ。
肩書無しの、肩書以前の、あなたの孤独。忙しさと忙しさのあいだの、エアポケットの不安と恐怖。イエスはすべて知っている。イエスはその骨で味わいぬいたから。